ノイズ

安定を求める声は、未だやまない
先刻、通りすがりのホワイトカラーが喫煙室で偶然目があった俺に、日常、政治、精神の退廃へのやるせない怒りから来る欺瞞の充溢を主張してきた
彼は、自分は詰まるところ孤独を微塵も感じさせない一体感を世界に求め続ける日々を独り孤独に送っているのだと言う
俺は彼の言う孤独がどんな弊害をもたらすのか一向に理解できなかったが、適当に相槌を打つことで、独り難を逃れる
どんな話であろうと、一方的に美化検閲された主張を展開されるのは嫌いだ
気分が優れないので、視覚から人を遮断する場所へと向かい腰を落ち着かせる
俺は神託が好きだが、それを行う巫女とを一緒に好んだりはできない質なのだ
これは神託を目的と手段とを混ぜて好む類いのものとして認識していないという発想から来る主張だ
これを仲間内に話すと、俺は大抵「差別主義者の兆候が見られる反応だ」と誤解を受け、そいつがどこかで聞き齧ってきた様な、現代における倫理的精神の素晴らしさについて、まるで啓蒙者のごとく高圧的に延々と諭されることになる
それらをいつも、大抵笑って聞き流す
彼等はそんな俺を少し不満げに思いながらも、日頃の鬱憤と俺の役割とを見立てられたことにある程度の充足感を憶え悪態をつきながら気怠そうに笑う
みんなが笑顔でいられる世界、それが俺の植えつけられた理想だ
到底無理なことは分かっている
理想を押し付ける理想を傍らに抱いている自分に途徹もない嫌悪を感じてもいる
今日も、妥協と自己揶揄で性分を充たす
第一笑っている人間をそこまで好ましいものとは思わない
俺の知らないところで笑っている人間を想像するだけで喉がえづかれるような最悪な気分にさせられる
あいつらは凡てが刹那で構成されていて
永遠という概念を保たせる事が出来ない
それは勿論自身にも言えることなのだが
結局のところ其れを望んでも其れその物には成り得ないという擬似俯瞰視点からの普遍的な結論に至る所で終わる
外は灯りと欺瞞と規律とで支えられている──とても綺麗な貌をしている──
幾層もの線で混じり合う騒音を哀願する
蛇にも良く似たそれは奈落の口へと堕つ──
息をいっぱいに吸う。余儀無くされた感情から託された、衝動を抑え、噎せるほどの澄んだ空気に咳き込む。ここは混ざり合う場所。ここは溶け合う場所。上から凝っと睨み、視線をなぶらせる。水が満ちる度、空疎な世界がうろんで揺れる