なんだったか……なんだったかなんだったか…
そうだ…俺の事をさっきまで考えていたんだ
畏怖
そうだ 俺は、畏怖を取り壊す下卑た性分
畏怖と同化するほどに生粋な素養
其等を約束する為の畢竟さ
そのどの持ち合わせも俺にはなかったんだ
いまに於いて尚も苛まれる
俺は、ひとえに隔てなく、こよなく愛していたはずなんだ
選択も刻もない俺の内で、確かに、確かに……
彼女の笑顔が絶えることはない
彼女の本質が揺らぐこともない、けども
絶え間なく脈打つ腕の中で笑っていたのは、彼女でなくて俺だ
爪を整え、髪を伸ばして束ねて結び、頬を上気させ、矯声をあげていたのだ
別段、俺が幸せを勝ち取るのに、彼女の幸せが入る余地はなかったのだ
完結しているから
嫉妬しているから
喚いているから
廃れていくから
多重に見出だすことに生き甲斐を見出だして
俺は何処から来たのかを忘れ
すがるよりべを、喪失せしめたのだ