開かない箪笥ばかり置いてあるくつくつ、くつくつ、くつくつ、くつくつ女は部屋の隅でせわしなく笑っている先ほどまで、清廉で敬虔な人となりであることの尊さを延々と垂れ流していたラジオは、今は間延びしたノイズ混じりの呻きで空気を濁らし震わせている…
尤も、歴史の系譜もとい意志の血脈は俺と無関係な世界で継承されている夢物語のお伽噺以上の何物でもない銀の弾丸で化物を撃ち砕くこともなければ鐵の長槍で人非人を打ち抜くこともない充足は憤りを無闇に募らせるばかりで痛みは喉元の刃を錆び付かせるだけ…
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