掠れ霞みきった鈍色の容れ物
底は抜け落ち、淵は錆び付き、掛けられていた柄杓はとうに朽ちている
みなもに映る赤褐色の空が蜃気楼に震えた

幻想を、幻想のまま還す、終わりなき倒錯を超越した希望を注いだ
容れ物から、光が洩れだし、大気を震わせ、空との境目を無くし、愛で彩られた理想郷が訪れた

総てを彼方へと還すため、色を無に帰す白が、空間を瞬く間に喰らい、理り、歪み、抱擁を、在るべき場所へ葬った
皆は、笑みを浮かべ、今生の別れを告げた

凡ては振り出しに戻り
斯くして賽は振られた